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神村 岡弁護士ブログ

失火の責任

2014.11.08 [ 神村 岡 ]

昨日、すすきので比較的大きな火事がありました。

原因はわかりませんが,狭い道路に面していたためなかなか消防車が入り込めず,鎮火まで相当な時間がかかったようです。


火事と言えば、「失火の責任に関する法律(失火責任法)」という法律があります。

この法律があることで、たとえ不注意で火事を起こして人に損害を与えてしまったとしても、基本的には損害賠償責任を負いません。


延焼した場合,個人では到底賠償しきれない莫大な損害額になることが多く,そのような非現実的な賠償責任を負わせないために作られた法律です。

いざ火事になったときの損害は,各自が自分の家について火災保険に入ることで対処すべきということになるでしょう。


しかし,失火なら全て免責されるわけではありません。


寝たばこなど,重大な過失があるとされる場合には,賠償責任は負わなければなりません。


また,賃貸住宅の入居者が失火を起こした場合,家主との賃貸借契約により,賃借人は家主に対して部屋を元の状態にして返す義務を負っていますので,契約に基づく損害賠償責任を負うことになります。


つまり,失火責任法があるため不法行為責任は負わないが,契約に基づく責任は負うということです。


賃貸物件に入居する際は,必ず火災保険に入るべきですね。


診断協会55周年

2014.11.08 [ 神村 岡 ]

先日,中小企業診断協会北海道の55周年記念交流会があり,新米診断士として参加してきました。当日は,診断協会内にいくつかある研究会の活動報告や事例発表,会員の表彰などの後に交流会という流れでした。


診断士の一人が言っていましたが,診断協会北海道の診断士の人数は、ここ10年で倍近く(約190名)になったそうです。


中小企業診断士の資格は知らない人も多いと思いますが,いざ何か資格を取ろうと思ったときに,結構上位に上がってくる人気のある資格のようです。


診断士はそれぞれ専門分野や強みをもっています。特定の業種に強い人,ITに強い人などさまざまです。また,なかなか個性的な方が多いとも思います。個人で診断士として独立している人もいれば,金融機関など企業内診断士として活躍している人もいます。


さて,私はまだ研究会に所属していなかったのですが,交流会の席で企業再生の研究会に入会することが決まりました。また,知的財産関係の研究会にも顔を出してみようと思います。


診断士仲間と切磋琢磨してやって行けたらと思っています。


危険運転致死傷罪

2014.11.01 [ 神村 岡 ]

先週の金曜日に,銭函のビーチでのひき逃げ事故の刑事裁判で,検察が訴因を過失致死傷罪から危険運転致死傷罪に変更したとのニュースが流れていました。


訴因というのは,ごく簡単に言うと刑事裁判の中で審理される,具体的にどのような犯行をしたのかという事実のことです。
過失致死傷罪から危険運転致死傷罪に訴因が変更されることで,危険運転致死傷罪の成否が審理されることになります。

自動車運転処罰法によると,過失運転致死傷罪(5条)が7年以下の懲役又は100万円以下の罰金であるのに対して,危険運転致死傷罪(2条)は1年以上の懲役です。1年以上ということは,最大で30年まであり得るので,かなりの違いになります。

起こしてしまった結果を考えると,過失運転致死傷罪で7年までしか刑を言い渡せないというのは軽すぎるのかもしれません。

今回の検察の判断を動かしたのは約7万名分もの署名です。

危険運転致死傷罪は成立要件が狭く,その分立証も難しいのですが,検察としては署名を受けてギリギリの判断で訴因を変更したのではないでしょうか。


アイスホッケーのルール改正

2014.10.25 [ 神村 岡 ]

札幌の社会人リーグに限った話ですが,最近ルールの改正がありました。

アイスホッケーには,アイシングというルールがあります。
端的にいうと,中央よりも手前からパックを相手陣地に放り込んだらプレーが止められて自陣からリスタートすることになるというものです。

アイスホッケーのの競技において,スケートリンクは縦に3つに分けられます。味方チームから見ると,味方チームのゴールのある方から順に,ディフェンディングゾーン,ニュートラルゾーン,アタッキングゾーンです。
そして,ちょうど真ん中のラインがセンターライン,ゴールがあるラインがゴールラインです。

センターラインの手前から,アタッキングゾーンに向けてパックを放り込み,それが誰にもふれずに相手のゴールラインを越えると,アイシングが成立します。アイシングが成立するとプレーが止められ,ディフェンディングゾーンに戻ってフェイスオフで再開されることになります。

これまでは,以上のような単純な話だったのですが,今回の改正によって,放り込まれたパックがゴールラインを越えても,攻撃側(放り込んだ方)がそのパックに先に触りそうであればアイシングにはならない,ということになりました。

これまでにも細かなルール改正はありましたが,これはなかなかインパクトのあるルール改正です。

この改正によって,ディフェンスがパックをアタッキングゾーンに放り込んで,フォワードが走ってそれを奪いに行くという作戦が成立することになります。アイスホッケーにもオフサイドがあるため,フォワードがパックが放り込まれる前にアタッキングゾーンで待っているということはできないのですが,とりあえずフォワードが頑張って走れば何とかなるという要素が強まってしまいました。

私の今のポジションはフォワード(レフトウィング)なので,運動不足の体にむち打って走らざるをえない場面が増えそうです。

下請法

2014.10.18 [ 神村 岡 ]

先日,日弁連が主催した下請法の研修会に参加しました。

下請法というのは,発注する側の会社(親事業者)と下請け側の会社(下請事業者)の関係を規律する法律で,一般的に下請事業者は親事業者との関係で交渉力が弱く不利な地位に置かれることが多いため,不利益を受けやすい下請事業者を保護するための法律です。

主な内容は以下のようなものです。

まず,親事業者の義務として,
①契約の内容などを示した書面を下請事業者に交付・保管すること
②下請事業者への代金の支払い期限を定めること(支払期限は物品等を受領する日から60日以内)
などが定められています。

また,親事業者への禁止事項として,
①物品等の受領拒否
②代金の支払い遅滞
③代金の減額
④返品
⑤親事業者の商品等の購入の強要
⑥親事業者の不当な行為を公正取引委員会等に告げたことに対する報復措置
などが禁止されています。

公正取引委員会は,親事業者がこの法律の規定に違反した場合,違反の状態を解消するように是正勧告をすることができる他,従わない場合には課徴金を課すこともできます。また,刑事罰としての罰金もあります。

このように,下請事業者を保護するための法律が整備されているのですが,この法律に反するような行為は後を絶ちません。
公正取引委員会への報告に対する報復措置が禁止されているとしても,将来的に発注を打ち切られてしまうリスクを考えると,下請事業者はなかなか強気に出られないということもあるかもしれません。

実は,下請法のような法律が定められているのは日本だけなのだそうです。
他の国では親事業者が好き放題しているのかというとそうではなくて,他の国では日本ほど下請事業者が不利な地位には置かれていないため,法律を定める必要もないのです。

日本で下請事業者が不利な地位に置かれているのは,同じ親事業者から長期間にわたって受注する企業が多いこと,全受注の中で特定の親事業者からの受注が占める割合がとても高いことなどが原因になっているようです。

親事業者との関係で不利な立場におかれることを考えると,受注先を増やすとか,一定期間ごとに取引を見直すといった工夫が下請事業者には求められると思いますが,新規開拓が難しい傾向が日本にはあるとか,一定のシェア以上の取引を親事業者から求められるとか,いろいろと障害もありそうです。

そうすると,提供する商品やサービスの質を向上させ,差別化を図り,替えのきかないものを提供していくということが,結局は下請事業者が自己防衛をするための一番の近道かもしれません。

未成年者の法律行為

2014.10.12 [ 神村 岡 ]

前回のブログで,多額の飲食をした未成年者が代金の支払を免れた事例を取り上げました。前回のブログではカード会社と父親との関係を主に取り上げましたが,今回は未成年者の店に対する債務について取り上げます。

客が飲食店で飲食をする場合,客と店との間では,店が客に対して飲食物等を提供して,客がその対価を支払うという契約が成立しています。

それは未成年者が飲食する場合でも同様です。また,先の事例では,客である未成年者はカードで代金を支払う約束をしたことになります(自分のカードではなかったわけですが)。

しかし,未成年者が法定代理人である親の同意を得ずに何らかの法律行為をした場合,その法律行為は原則として取り消すことができます(民法第5条2項)。未成年者の保護のため,そもそも未成年者が法律行為をする場合には法定代理人の同意を得なければならないとされており(同1項),その反面として,その同意を得ない法律行為は取り消すことができるとされているのです。

ただし,未成年者が詐術を用いて,自分が未成年者ではないと相手に信じさせた場合には,その法律行為は取り消すことができないとされています(同21条)。「詐術を用いた」とは騙すことで,そのような場合には未成年者より騙された相手の方を保護すべきだからです。

もっとも,未成年者が自分が大人だと相手に信じさせるような行動をとった場合でも,それが常に「詐術を用い」たと評価されるわけではなく,詐術はそれなりに高度である必要があります。簡単にわかる嘘にだまされた相手は保護するに値しないということでしょうか。

先の事例では,未成年者は平然とお酒を飲んだり煙草を吸ったりして,あたかも大人であるかのように振る舞いましたが,裁判所はそのような行動は詐術には当たらないと判断しました。

なお,未成年者が,特に親の同意を得ずに買い物をしたり飲食をしたりするのはごくありふれたことですが,このような場合の未成年者の法律行為が全て取消し得るわけではありません。

未成年者が法定代理人から目的(使途)を定めて財産(お金など)の処分を許された場合,未成年者はその目的の範囲内で自由に財産を処分することができ(同5条3項),その反面で取り消すこともできません。

未成年者が小遣いで自由に買い物などをする場合,目的を広く捉えれば,親が事前に財産の処分を許しているということになるでしょう。

契約解除のその後

2014.10.07 [ 神村 岡 ]

クレジットカードやローン提携販売(自動車ローンなど)で何か物を購入した後で,クーリングオフや債務不履行で購入契約が解除されたとします。そのとき,クレジット会社やローン会社に対する支払いはどうなるでしょうか。

この場合,割賦販売法30条の4,35条の3の19により,基本的には,元の購入契約が解除されたことでクレジット契約やローン契約も解除されますので,クレジット会社やローン会社に対する支払いも免れることになります。

ただし,一定の場合には,クレジット会社やローン会社に対する支払いを免れることができません。

少し細かいですが,割賦販売法が対象としているのは,ローン契約による購入の場合は支払いが2か月以上にわたるものだけで,クレジットの場合も2か月以内に一定の支払い日に全額を支払う(通常の一括払い)場合は対象としていません。
また,総支払額が4万円未満の場合にも,上記のようなルールは適用されません。
したがって,このような場合,元の購入契約を解除してもカードの支払いは免れないという事態が生じることもあります。

実際に裁判で争われた事例として,未成年者が勝手に親のクレジットカードを使って豪遊(「飲食」)してしまい,親がカード会社から数百万円の代金の支払いを求められたという事案がありました。

このような場合,店との間の元の契約が未成年者による契約であることを理由に取り消されても,カード会社に対する支払い義務を当然に免れられるわけではなく,支払い義務を免れさせるのが相当といえるような特別な事情がなければなりません。

実際の裁判では,未成年者が豪遊したことでカードの利用額が跳ね上がり(他人による使用を疑わせる事情があった),カード会社が未成年者に本人確認を行い,その未成年者が本人(父親)の生年月日等の情報を適切に答えられなかったにもかかわらず,そのままカード利用を通してしまったといった事情があり,カード会社の落ち度が大きかったということでカード会社から父親に対する請求が棄却されました。

未成年者が一人勝ちした事案ということになりますね。。

落とし物を拾ったが・・・

2014.09.26 [ 神村 岡 ]

落とし物を拾った場合,まずは警察に届けますよね。
そのまま自分のものにしてしまうと遺失物横領罪という犯罪が成立してしまいます。

ところで,警察に届けた後持ち主が現れた場合,拾った人にはいくらかお金が支払われることになっています。

これは,遺失物法28条に以下のとおり規定されています。

(報労金)
第28条
 物件(誤って占有した他人の物を除く。)の返還を受ける遺失者は、当該物件の価格(第9条第1項若しくは第2項又は第20条第1項若しくは第2項の規定により売却された物件にあっては、当該売却による代金の額)の100分の5以上100分の20以下に相当する額の報労金を拾得者に支払わなければならない。

つまり,拾ったものの価格の5%から20%を報労金として持ち主に請求できるのです。

それでは,持ち主がケチで,支払わなかったらどうなるのでしょうか。

拾った人には報労金を請求できる権利がありますので,法的手続によって請求していくこともできます。
しかし,法的手続をとるためには持ち主の名前,住所等の情報を知っておく必要があります。

実は先日,遺失物の報労金に関する相談を受けたのですが,持ち主の名前と電話番号だけ警察から聞いていて,持ち主と電話連絡がとれなくなってしまったが,住所を警察に聞いても個人情報だといって教えてくれないとのことでした。

私見としては,正当な権利行使のために必要な情報を警察しか持っていないのですから,警察は教えるべきだと思います。個人情報の保護は理由にならないと思います。

しかし,警察が拒否した場合に情報を聞き出すことは相当困難と思われますし,費用もかかることになると思います。また,電話番号から住所を調べることも可能な場合もありますが,これも費用がかかってしまいます。

ですから,取りっぱぐれを防ぐためには,持ち主が現れた時点でちゃんと住所も聞いておいた方が良さそうです。

海外進出支援

2014.09.20 [ 神村 岡 ]

弁護士会が主催する,中小企業の海外進出支援の研修会に参加してきました。

中小企業の海外進出支援については,ジェトロや経済産業省など様々な機関が情報提供やビジネスマッチング,計画作りの支援などを行っています。情報提供という意味では,ジェトロのホームページなどは非常に充実しています。
そういった状況で,弁護士が中小企業の海外進出に対してどのような支援をすることができるのかというのが一つのテーマでした。

弁護士として支援しがいのある局面は,やはり海外の企業と契約書を取り交わす際の内容のチェックでしょう。ジェトロなどの支援機関の支援は充実しているものの,契約に伴う法的リスクの回避,除去といった面では,やはり弁護士の出番になります。

海外進出と言うと,現地に法人を立ち上げるという大がかりなものを想像してしまいがちですが,海外への製品の輸出なども立派な海外進出と言えます。
今日の研修会では,展示会経由で海外向けに商品を輸出する際の落とし穴についての話もありました。

どういう話かというと,海外の業者向けの製品展示会で,海外の業者に興味を持ってもらって輸出を始めることができたが,間もなく,当該外国の他の業者から,「あなたの会社の商標は既に他の会社が登録していて,このままではまずいので私がなんとかしましょう」というような案内が来て,最終的に商標を登録している会社に結構な金額の解決金を,案内を出してきた業者に相応の報酬を支払うことになるというものです。

もちろん,案内を出してきた業者と商標を登録していた会社はグルです。展示会に来た会社ももしかしたらグルかもしれません。
このようなケースが,海外の業者向けの展示会をきっかけに商品を輸出し始める場合にはよくあるそうなのです。
これに対処するためには,輸出を開始する前に自分で商標を取ってしまうというような対策が必要になってきます。

海外進出は,うまくやれば新たな市場を開拓することのできる魅力的な方法ですが,上の例に限らずリスクはつきものです。
リスクを事前に洗い出しておく作業は欠かせないでしょう。

消滅時効

2014.09.13 [ 神村 岡 ]

民法には,消滅時効というルールがあります。

これは,お金を請求することのできる権利(債権)は,請求が可能になったときから一定期間請求しなかった場合は,請求することができなくなってしまうというものです。

なぜこのようなルールがあるかというと,権利の行使がいつまでも許されるとすると,債務者がいつまでも不安定な状態におかれる上に,長期間の経過によって証拠がなくなってしまうことが多いというようなことが理由です。

消滅時効が成立するための期間は,基本的には10年間ですが,債権の種類によってより短い期間で消滅時効が成立することになっています。

例えば,不法行為による損害賠償請求権は3年間,労働者(ごく短期の契約の場合は除く)の給与請求権は2年間,旅館や飲食店の代金は1年間といった具合です。

このように,短期間で成立する消滅時効に関しては種類毎に細かく期間定められていたのですが,これが民法の債権法分野の改正により5年に統一される見込みとなりました。

かなりすっきりしますね。

そういえば,これまで残業代の請求は上記のとおり2年間の消滅時効にかかっていたのですが,これが5年間まで延長されると,かなりインパクトは大きいです。

残業代をしっかり支払っていない会社は,5年分の残業代を一度に請求されることになり,場合によっては相当な金額になります。このような可能性を考えると,使用者にとっては,普段から残業代をしっかり計算して支給するのはリスク管理としてとても重要だと思います。

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